Sasha BLOG

Sashaの療育日記

不安なときは下見

発達障害の子を育てる上で大切なことは、日常生活の中の不安を少しでも軽減してあげることです。ワーキングメモリの少なさのため、「場所に対する不安」「これからの未知の行動に対する不安」が重なると、パニックを引き起こす原因となってしまうからです。

 

そのため私は、宿泊行事があるたびに、息子を現地まで連れて行くようにしました。自分が心地よく活動できる範囲を、心理学ではコンフォートゾーンというそうですが、宿泊行事の前にこのコンフォートゾーンを広げてあげると、落ち着いて参加できます。

 

「俺はこの場所を知っているぞ」という精神的に優位な状態があれば、パニックを引き起こすトリガーがひとつ減ります。ワーキングメモリーも働きやすくなるので、平常心を保つために、下見はとても有効です。

 

宿泊行事に限らず、受験で面接に行くときや、新しい環境に移るときなどに、遠慮せず「下見に行きたい」と言ってみたら良いと思います。

 

息子の場合、小学校に入学するときは、入学式の会場に事前に入らせていただきました。担任の先生にも事前に会うことができたので、挨拶のためにも良かったと思います。

 

中学校の時には、成長してそこまでの配慮はしませんでしたが、場慣れさせるために、中学校の学校公開には毎回連れていきました。高校に入る際もそうです。

 

高校は、本来なら受験するまで入学先が分からないのですが、息子の場合は場慣れを重視して、高校1年生の時には入学先を決めていました。

 

東京には、「絶対ここ以外は受験しません」と約束をすることで、入学を保証してくれる私立単願推薦の仕組みがあります。これを利用すると早々と決定して、場所に慣れさせることに専念しました。

 

小学校のときは、とにかく野外の宿泊行事が多かったので、八ヶ岳や千葉の岩井、新潟の奥只見湖まで、公共交通機関を利用して訪れました。

 

都会の子が自然を体験するための施設なので、車なしで訪問するのに大変苦労しましたが、施設の方は皆さんとても親切にしてくださいました。

 

「子供が発達障害なので、宿泊の時にパニックを起こさないように下見に来た」と伝えると、たいてい施設の中を見せていただくことができました。こちらが恐縮するほど親切な方ばかりでした。

 

八ヶ岳では、飯盛山登山で使用する、一般の登山道ではない団体用登山口を特別にあけてくださいました。奥只見では、施設長がダムの電力館まで車で送ってくださり、立ち回り先を確認することができました。嫌な顔ひとつしないで、親身に対応してくださった優しい館長の皆さまには、本当に感謝してもしきれません。

 

私は、宿泊を伴わないで場所も、なるべく下見に訪れていました。普通の子なら、楽しみにとっておきたいようなことですが、とにかく集団行動に迷惑をかけたくない、息子を安心させたいという思いです。集団行動でパニックを起こすと目立ちますし、やはり息子には普通級は無理なんじゃないかと言われるかもしれません。

 

それが嫌で、宿泊行事や校外活動の下見には時間を割いて対応していました。一緒にいると、彼の弱点もわかりますので、「お風呂の後の部屋着とパジャマは一緒でいいな」とか、「脱いだものを再度使うより、毎回新しいものを着るシステムにした方が荷物の管理がしやすいな」とか、見えて来るものがあります。

 

中学3年生の時の奈良・京都への修学旅行は、さすがに下見には行きませんでしたが、その頃には息子も成長して、学校でパニックを起こすことはなかったので、旅行先で何かあってもパニックは起こさず、我慢できるだろうと予想が付きました。

 

3年間でクラスの皆んなとも馴染んでいたので、息子の良い面悪い面を、クラスのみんなも分かってくれていたように思います。特に小学校から一緒の子たちは、程よい距離感で息子に接してくれていたように思います。

 

高校は、面倒見が良いという評判の、私立男子校に入りました。この学校は、4月1日が入学式、4月3日からチームビルディングのための宿泊訓練をするという、かなりハードなスケジュールの日程だったので、直前の春休みを利用して、場所の下見にだけいきました。全く面識のない生徒どうしで、知らない場所での宿泊訓練となると、またハードルが上がってしまうからです。

 

このような、息子を学校生活に順応させるための取り組みに、お金はかかりましたが、私たち親子にとってはいい思い出となっています。