自閉症の子なら、ほとんどがそうだと思いますが、息子はとにかく身支度が出来ない人でした。幼稚園の時は登園後、リュック を置いたまま途方に暮れていたそうです。
幼稚園では、先生が介助して、朝の支度をするという生活が続いていました。息子の幼稚園は完全母子分離だったため、実際の様子を見たわけではありません。
2年目からは、お弁当をカバンから出すくらいはやっていたようですが、完全に自立出来ていたわけではありませんでした。そこで私は、視覚支援のための手順表をパソコンで作りました。
カバンを机に置く、帽子をぬぐ、チャックを開ける、と言う手順を書いた簡単な表です。これで視覚支援になると思ったのですが、そもそもこの「視覚支援表を出す」ということが出来なかったので、自立には至りませんでした。
そんな訳で、私が本格的に彼に向き合ったのは、小学校に入ってからです。小学校でも、ランドセルを机に置くまでで、中の教科書は出さずにボーッとしていたそうです。
そのため、小学校一年生のとき、担任の先生の勧めで付き添い登校を始めました。息子の小学校では、毎朝児童が玄関ホールに集まり、校長先生と挨拶をしてから教室に入るルールでした。
いわば毎朝が全校集会です。このため、朝早く登校してゆっくり支度する、ということは出来ませんでした。
ガヤガヤとした騒々しい環境だと、聴覚に多くのワーキングメモリを取られ、ほかのことが手につかなくなります。このため、全校集会がある限りは教室での自立は難しそうでした。
状況が変わったのは、小学校三年生の時です。新しく赴任された副校長先生は、特別支援学校の経験が長く、集団に合わせるよりも、玄関ホールでの全校集会をカットして、身支度を自立するほうが、本人のためになると担任に提案してくれたのです。
さらに副校長先生は、息子がロッカーまで歩かなくていいように、買い物かごを席の近くに置いて、ロッカーの代用とするよう提案してくれました。朝の身支度のハードルを「自分でできる」ラインまで下げることで、本人に自信をつけさせてくれたのです。
次は、ランドセルから教科書を出すという作業をさせるための工夫を考えました。バラバラだと何往復かしなければならないので、一度で済むように、教科書は道具箱に入れて、道具箱ごとランドセルに入れるようにしました。
小学校から支給された紙の道具箱は、ランドセルに入らなかったので、プラスチックの市販のものに変えました。すると、ようやく息子が自分で教科書を入れられるようになりました。
ただプラスチック製の道具箱では、教科書とサイズがピッタリすぎて、隙間がなく出しにくいため、一部をカッターとハサミで切り取って、指が入るようにしました。
また、教科書やノートは、教科別に色分けしました。国語は赤、算数は青、理科は緑、社会はオレンジ、英語は黄色、音楽は紫、という感じです。
テープは、いろいろ試しましたが、テプラがおすすめです。薄いので、さばく時に邪魔にならないからです。背表紙に貼っておけば、本棚に入れたときにも一目で分かります。
中学校では、縦型のリュック を使用したので、箱ではなく教科別に蓋付きファイル入れで分けました。プラスのファイルがおすすめです。ファイルにもシールを貼っておくと、カバンの蓋を開けたときに一目で分かります。
行動を少しでも早く、楽にできるようにサポートしてあげることで、学校生活は楽になるのです。高校生になった現在では、自分で自主的に色分け作業をしています。